Last Updated on 2023年10月1日 by 海外勤務のすすめ
この記事を書いた人
西原タオル
ライター・編集者。東南アジア各国で約9年間、日系企業のサラリーマンとして駐在生活(シンガポール、マレーシア、ベトナムなど)。現在はフリーランスの「何でも屋」に。
海外赴任からの帰任時、おカネと税関にまつわる見落としやすいポイントをご存知ですか?
日本への本帰国が決まると、ごあいさつや後任への引き継ぎ、引っ越し準備で忙しく、あっという間に帰国の日を迎えてしまいます。
すると、大事なおカネを預けた銀行口座の処理を忘れたり、空港税関で思わぬトラブルに遭遇したりするんです。見落としがちなポイント4つを紹介しますので、対策して楽しく帰国しましょう。
目次
1.帰任時に見落としやすいおカネと税関ポイント
1-1.現地銀行口座の解約
海外生活に不可欠な「現地の銀行口座」ですが、海外銀行の多くは、口座所有者に現地在留ビザがなくなったら解約を求めてきます。
ですから、銀行口座は自主的に閉じて帰国するのが一般的。
でも、この解約手続きを忘れる方が意外と多いのです。
まず解約は、銀行窓口にふらっと行けばすぐできるものではありません。
とくに新興国の場合、労働契約書やパスポートの全ページ・コピーなど、大量の書類を準備しなければなりません。しかも、不備を指摘されると、何度も窓口に行かなければならないことも。
そして、日本への送金手続きを伴う場合は、さらに時間がかかります(とくに中国、ベトナムなど社会主義国は、海外送金の手続きが煩雑です)。
とにかく、解約には時間がかかります。
帰国の数日前になって口座解約に気がついても書類準備ができず、帰国後、解約手続きのためだけに、再び赴任地へ渡航しなければならなくなった例は多数あります。
本人がパスポート持参で窓口に行かなければ解約手続きを進めない銀行が多いからです。
1-2.口座を遺す際の注意点
また、「口座解約が面倒だし、預金金利もいいし」という理由から、現地銀行口座をそのまま維持したい方もいるでしょう。
日本で預金しても金利はなんと年率0.002%程度ですが、それが海外口座だと、年率5〜6%もザラ。海外赴任で貯めたおカネ、できれば現地口座で運用したいと思いますよね。
ただ、維持する場合は「口座凍結」に注意して下さい。
各銀行により異なりますが、一定期間、口座の利用がない場合、口座はロック(凍結)されてしまうのが一般的です。
一度凍結されてしまうと、解除するために本人が銀行に赴く必要がありますが、その際に在留ビザがないことがわかると、問答無用で解約を求められます。
しかも解除まで、嫌がらせのように1〜2か月もの長い時間をかけられる例も(もちろんその期間は無利子です)。さらに、凍結解除のための手数料が引かれ、高金利で得た利益も吹き飛んでしまいます。
ポイント
口座凍結を避けるためには、携帯電話番号の料金引き落とし口座にするのがおすすめです(口座を維持するなら、連絡先となっている現地の携帯電話は解約しちゃダメですよ)。
そのほか、スポティファイやネットフリックスなど、定額購読(サブスク)サービスの引き落とし口座に指定しておくのもいいでしょう。
こうすれば定期的に一定額の引き落としがあるので、口座を生かしておくことができます。
※香港やシンガポールの銀行では、口座開設後に海外転居しても口座を維持できる場合もある。確認してみよう。
1-3.持ち出し可能な現金の確認
銀行口座の処理もしっかりしたし、あとは「帰国便に搭乗するだけ」の安堵のひととき…になるはずの空港で、思わぬトラブルが発生しがちです。
最も多いのが「現金」の持ち出し。
銀行口座からの国際送金は面倒だし手数料も安くないから…と、現金で引き出してハンドキャリーで持ち帰ろうとする方が必ずいます。
ところが、各国政府は国外へ持ち出せる現金額を決めているんです。
【アジア各国の現金持ち出し制限額】
ベトナム:5,000米ドル(あるいは同額外貨)
インドネシア:1億ルピア(約7,000米ドル)相当の現金
フィリピン:1万米ドル(あるいは同額外貨)
カンボジア:1万米ドル(あるいは同額外貨)
マレーシア:1万米ドル相当の現金
タイ 1万5,000米ドル(あるいは同額外貨)
シンガポール 2万シンガポールドル(約1万5,000米ドル)相当の現金
※2021年11月時点調べ。詳細は、外務省サイトなどでご確認下さい
それまでも出張や帰省の一時帰国でけっこうな額の現金をハンドキャリーしていて、一度も見つかった経験がない人でも、なぜか帰任時の搭乗で見つかる方が多いのです。
荷物の量や帰国する家族連れが醸し出す独特な雰囲気から、税関職員が嗅ぎつけるとも言われています。
制限額以上の現金はどうなるのか?残念ですが、没収されてしまいます。
大量の現金持ち出しは危険ですから、やはり国際送金を利用したほうが安全です。
最近では、暗号資産(仮想通貨)にして「送金」する方も多いようですね。
1-4.アダルトな映像・画像データ
空港の税関では、ときおり意外な所持品もチェックされます。
パソコンやスマホに保存された「アダルト映像・画像」です。
もしそのデータが、パートナーとのエッチな画像なら顔を赤くする、くらいで済むでしょうが、それが無修正のハードなものだったりしたら…嫌がらせの別室聴取くらいはあると思って下さい。
また、児童ポルノに間違われた場合は悲惨です。
東南アジア某国に赴任していたA氏は、風俗マッサージのある女性と仲良くなっていましたが、彼女は小柄でしかも童顔でした。すっぴんならば小学生に見えたとか。
そんな彼女の裸画像が、あろうことかA氏のスマホに残っていたのです。発見した税関職員には、児童ポルノにしか見えません。
その後、A氏の妻子だけはなんとか帰国便に搭乗できたものの、A氏は空港の留置施設に数週間も留置されたのです。嫌疑を晴らすまで長い取り調べを受け、相当な弁護士費用もかかったといいます。
もしも、そんな危ないアダルト画像を所持している方は、記憶だけを胸の奥底にしまって、記録はすっぱり消去して下さい。
1-5.日本に持ち込めない意外なモノ
さて、帰国便に無事乗り込み、いよいよ母国へ。
疲れと安堵感が入り混じった到着直後も、意外な落とし穴が税関で待っています。
日本への持ち込みでは、薬物はもちろん、動植物なども厳禁なのは皆さんご存知でしょう。
では、ブランド品の偽物も持ち込みが禁じられていることは?これも海外在住者ならば、多くの方が「知っているよ」と答えると思います。
しかし、ここに落とし穴が。
実は、本物だと思っていたブランド品が「偽物」だとして押収される事例があるのです。
専門店で買ったはずなのに?いえいえ、外国では、なんと専門店そのものが偽物の事例だった事例もあるんです。
知人や同僚のプレゼントが残念ながら偽物だった例もあります。
摘発されたら、諦めるしかありません。
「ブランドなのに安いなあ」と思ったら、それは違法性が高いものと心得えましょう。
また、本物のブランド品なのに、日本持ち込みできないものがあります。
英国発祥のファッション・ブランド「Superdry 極度乾燥(しなさい)」です。
日本ではあまり馴染みのないブランドですが、欧米やアジア各国ではとても人気があります。
なぜ日本で知られてないのか?名前からピンとくるかも知れませんが、日本ではアサヒビールが商標権を持っているため、日本展開できないのです。
税関でも「偽物」と同等にみなされるので、没収対象になってしまいます。
2.まとめ
おカネと税関にまつわる帰任時の注意点を4つ紹介しました。
まずは銀行口座の処理をしっかりやりましょう。
そして現地の出発時では現金や思わぬアダルトなデータの持ち出しに気を配り、日本入国時には意外な禁制品の落とし穴にはまらぬよう注意しましょう。
一つひとつ念入りな準備と確認をして、帰国前後に後悔することがないようにして下さい。