Last Updated on 2023年10月1日 by 海外勤務のすすめ
突然フランスに一家で赴任が決まったら、一番に気にかけるのが子供の教育です。
現地の言葉も話せない状況でどんな学校を選べばいいのか、フランスの教育システムはどうなっているのか、日本とどう違うのか。
そんな疑問を解消すべく、今回はパリに長く在住されているufeoさん(女性)に、現地日本人子弟の教育について記事を作成頂きました。駐在が決まった方のご参考になれば幸いです。
なお、パリでの子女教育の【中高編】は下記記事をご参照ください。
http://kaigai-susume-com.check-xserver.jp/paris-eme/
1.フランスの教育システム
フランスの学校制度は5・4・3制で、義務教育は6歳16歳の10年間ですが、2019年から義務教育開始年齢をさらに3歳まで引き下げることになりました。
子供の教育・文化・職業訓練の機会を平等に保障する憲法によって、義務教育費は無償とされ政教分離を掲げています。
また日本と大きく違うところは大学まで「受験がない」こと。
そのため、早くから塾に通わせたり塾選びで悩む必要もなく、子供にとっても親にとってもストレスの少ない教育環境と言えます。ただ、家庭によってはより良い教育を子供に望むところもあり、そうした家庭では家庭教師を雇うこともあるようです。
受験がないから学校を選ばないかというとそうでもなく、各地域によって安全面、指導目で評判のいい学校や、ブルジョワ子弟の多い私立学校などもありますが、そうした学校への入学は、お受験というより書類審査で選考されることが多いようです。
2.小学校について
1.基本情報
日本の小学校にあたるフランスの初等教育は6歳から11歳までの5年間で、以下のような学年呼称となります。
日本 | フランス |
小学校1年生 | CP |
小学校2年生 | CE1 |
小学校3年生 | CE2 |
小学校4年生 | CM1 |
小学校5年生 | CM2 |
2.日本と異なる点
(1)通学
フランスの小学校では集団登校や子供だけの単独登校はなく、安全面から親などが送迎するのが基本となっています。フランスは共働きが多いため、両親の送り迎え時間帯を考慮して、子供の学校滞在時間が長く、放課後も17時18時まで学校で子供を預かってもらえます。
(2)授業
週5日制で授業は週24時間、水曜日または土曜日が休みとなります。
時間割という概念もなく、先生の都合で授業内容が途中で変わったりします。宿題も少なく、夏休みなどの休暇中は宿題はありません。
また公立校では授業参観やイベントなどはありませんが、私立では年間行事もいろいろ企画されています。小学校以降は、生徒の能力に応じて飛び級や留年の制度があります。
(3)長期休み
フランスでは学校のバカンス期間が多く、年間に合計4ヵ月ほどのバカンスを取ります。さらに教師もストライキをするため、その間は授業はお休みとなります。
親も子供のバカンス期間に合わせて有給を取るため、子供と過ごす時間が多いのは喜ばしいところです。
【下画像:リセ・インターナショナルで毎年催されるXmas祭】
3.学校選び
子供の教育において、小学校は子供の将来の基幹を形成する大切な場所となります。
ポイント
日本人駐在家庭の場合、最初に指針を決めなくてはならないのが、「大学など子供の高等教育をフランスで進学させるか、日本で進学させるか、あるいはどちらかは未定か」という選択です。
初等教育でどんな言語・文化・環境に触れるかで将来の目標もよりはっきり見えてくるのです。
(1)現地の公立小学校
パリ市内の各区にある公立小学校のうち、23校で外国人子弟を受け入れており、日本人の子弟も入学・転校は可能ですが、ほとんどの学校がフランス語での授業ですから、基本的に「フランス語が理解できること」が前提となります。
一般にフランス語の補習クラスがあり、早く授業についていけるような配慮もなされています。
公立小学校というフランス人に囲まれた中で初等教育を受けさせたい日本人家庭の多くは、両親が日仏カップルでフランス在住だったり、バイリンガル教育を受けさせたい家庭がほとんどです。
最初は語学の面でハンディがありますが、家庭教師をつけたりフランス人と日常的に交わることで、フランス語も上達し、フランス的な考え方や習慣も身についていきます。
(2)パリ日本人学校(現地私立校)
将来日本で進学させることを前提にするのであれば、日本人が集い共通語は日本語、友達もできやすい私立の日本人学校が最も無難です。
小・中学までの一貫校で、日本人教師による授業は日本語ですが、フランス語も週に数時間カリキュラムに組まれ、フランス人学校との交流もあり、馴染みやすい環境で日仏文化を一度に吸収できる利点があります。
場所はパリの西郊外にありますが、パリ市内の数か所から通学バスが出ているため通学には便利です。
【パリ日本人学校の基本情報】http://www.parinichi.com/
(3)リセ・インターナショナル(現地私立校)
パリ郊外の高級住宅地サン・ジェルマン・アン・レイにある国際学校で、外国人学生の受け入れも積極的で対応も柔軟ながら、国際バカロレアを目指す進学校としても名高く、厳しい授業が行われています。
日本セクションもあり、正規履修とオープンキャンパスの2システムを導入しています。後者は、地元の公立校に通いながら、週に23回セクションに通学できるというものです。
学校への通学は送り迎えが義務付けられており、放課後の子供の残留が許可されていないため、仕事を持つ親にはやや手間がかかるかもしれません。
【リセ・インターナショナルの基本情報】
https://www.li-sectionjaponaise.org/index.php/ja/9-japanese
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/world_school/05europe/sch5360002601.html
(4)パリインターナショナルスクール(ISP・現地私立校)
パリの高級住宅街16区に位置する小さな学校で、校庭はなく教室も手狭ですが、62ヵ国以上の国籍の生徒が学ぶ国際色豊かな学校です。小中高一貫性ですが、それぞれ校舎のある場所が異なります。
【パリインターナショナルスクールの基本情報】https://www.isparis.edu/
(5)パリ・アメリカンスクール(ASP・現地私立校)
パリ西郊外のサン・クルー市に位置し、4万という広大な土地にあるアメリカンスクールです。授業は英語でアメリカ式、日本語セクションはありませんが、英語圏の駐在員子弟や国際的に活躍するフランスの有名人の子弟も多く、国際人脈の基礎を育んだり、米国への大学進学を目指す人には有利です。
【パリ・アメリカンスクールの基本情報】https://www.asparis.org/
3.入学・転校の手続き
1.公立学校
駐在員の場合、入学、転校など行政上の手続きは会社が処理してくれますが、一般情報として公立の学校への入学は以下の手続きが必要となります。
1.居住している区の区役所へ出向き、入学に必要な書類を取り寄せる
2.在仏日本大使館で発行する書類が必要であれば、取り寄せる
3.書類を区役所に提出して受理されたら、学校側と面談する
2.私立学校
各校によって手続きや必要書類は異なるので、各HPで確認が必要です。中には先着順というシステムを取る学校もあるので、予め下調べが必要です。
【例:パリ日本人学校の場合】http://www.parinichi.com/f=info&p=nyugaku
4.まとめ
フランスの学校は日本とはかなり異なる教育環境ですが、外国の友達もでき異文化に触れ恵まれた大きなチャンスと言えます。
将来の目標を定めて学校を選ぶか、行き当たりばったりに選ぶかはご家族次第、どちらが正解というわけでもありません。
いずれも、子供の現在と将来を考えて、一人一人の個性と志向に合った理想的な教育の環境を、家族で模索してみては如何でしょう。