Last Updated on 2023年10月1日 by 海外勤務のすすめ
この記事を書いた人
西原タオル
ライター・編集者。東南アジア各国で約9年間、日系企業のサラリーマンとして駐在生活(シンガポール、マレーシア、ベトナムなど)。現在はフリーランスの「何でも屋」に。
家族帯同の海外赴任も、本帰国が決まったら引っ越しや日本の家探しなどで忙しくなりますが、大事なことなのにうっかりしがちなのが、帰国後の子どもの教育について考えておくこと。
海外でせっかく身につけた「語学力」を維持する方法や、帰国子女のための「学校選び」のコツ、そして中学生ならば気にすべき「帰国タイミング」について、注意点をまとめました。
しっかりチェックして、帰国後の子どもの教育に備えましょう。
目次
1.語学力
子どもは海外生活で、大人より苦労することなく現地の言語そして英語を身につけます。
現地校やインターナショナル校に通った子どもはもちろん、日本人学校であっても英語や現地語の授業は日本よりも手厚いため、ほとんどの子どもは国内公立校の子どもよりも高い語学能力をつけるはず。
せっかく身につけた語学力は帰国後も維持させたいものですが、ちょっとコツがあります。
1−1.子どもの外国語力はすぐ錆びる
語学の習得が早いぶん、忘却するのも早いのが子どもです。
日本では、当然ながら生活の全ては日本語で完結できますし、子どもの世界にとって最重要になる友だち関係も、日本語のみで構築します。
異文化に適応するために必要だった外国語能力は、あっという間に錆びてしまいます。
せっかく子どもが得た語学力、親は意識的に維持させようと務めることが重要です。
帰国後も語学力を維持させたいならば、まず「海外子女教育振興財団」が主催する「帰国子女のための外国語保持教室」への入室を検討してみましょう。
外国語保持教室とは?
英語またはフランス語の能力を持つ子どもを対象に、三大都市圏の9か所またはオンラインで会話から読解まで、さまざまな授業を提供しています。
年間費用は約20万円前後。語学は必ず役に立ちますから、維持できるならば高くはない金額でしょう。
他にも、外国語力の維持のために、各種オンライン教室を活用しましょう。
レアジョブ英会話とは?
オンライン英会話で会員数No.1のレアジョブ英会話なら、受講料は「25分142分〜」と超手頃な料金で受講できます。
子どもの能力に見合った内容で会話練習できます。
一日25分なら子どもの集中力も途切れませんし、基礎能力を維持するためなら十分。
実は、海外生活中でもレアジョブを受講している駐在家庭の子どもは多いのです。
また、英語・フランス語以外の語学力(中国語など)を維持したいという人も、同じくオンライン教室の活用がおすすめです。
1−2.受験には英会話力より読解力
海外生活で子どもが身につけた語学力ですが、実はもっとも伸びたのは会話力ではないでしょうか。
もちろん会話は大事ですが、語学のコアとなるものは読解力です。
受験科目としての英語でも読解力が中心となっているのは、文書読解能力こそが学問や職業でも重要だからです。
「うちの子は英語が話せる」と自慢に思っていたのに、学校の英語テストで思うように点が取れず唖然とする親は後を絶ちません。
「日本の英語教育はおかしい」と的はずれな批判でイライラせず、会話と読解は別であると認識して、文法学習をしっかり与えたいもの。
前述したように会話力も維持しながら、塾や通信教育で文法学習もしっかりやらせてみましょう。
2.学校選び
海外生活から日本に戻り、子どもが学校になかなか馴染めない例が多数あります。
カリキュラムが全く違う現地校やインター校に通っていた場合はもちろんですが、日本人学校でも日本国内の公立校とは開放感や自由度が違うので、ギャップが大きいのです。
「すぐに慣れるさ」と親が楽観していると、不登校になってしまう子も。
学校選びは慎重にしましょう。
2−1.公立校…学区変更の引っ越しも考慮を
海外赴任の家庭は、都市圏よりも地方在住だった方のほうが多いかも知れません。
日系企業の海外展開は、地方の製造業企業が中心ですからね。
そんな場合、戻ってくるのは公立校しかない場合が多いですよね。
公立学校にも校風はあります。
帰国する子どもたちにおすすめなのは、外国出身の生徒が多く在籍する学校。
海外生活で、知らないうちに外国化している子どもも寛容に受け入れてくれるでしょう。
自治体に問い合わせれば、そんな異文化受け入れに積極的な公立校を確認できます(「日本語支援学級」があればすぐ分かります)。
そんな学校が居住予定地で見つからないときはどうするか。
Aさん一家の例をご紹介しますと、なんと持ち家を手放し、外国出身の家庭が多い校区へと転居しました。
持ち家があった校区の公立校に子どもが馴染めず、不登校がちになったのがきっかけでした。
子どもは転校先で人が変わったように元気になり、嫌がっていた語学力維持のためのオンライン講座も進んで受けるようになりました。
2−2.私立校…手間をいとわず見学(オンライン面談)を
海外から都市圏に戻る場合、公立校だけでなく私立校も選択肢に入ってきます。
私立校の中には、海外帰国子女向けに選抜で優遇を設け、積極的に受け入れる学校もあります。
ただ、学校と子どもの相性は、学校側のアピールだけでは分かりません。
帰国子女受け入れ歓迎だったはずなのに、その子どもの親に「お子さんは海外育ちのせいか、礼儀作法がなってません」と、まるで海外赴任したのが悪いかのような指導をした私立校も実際にあります。
では、どうやって選ぶべきか。
私立校には、オープンキャンパスを頻繁に実施している学校もありますし、学校見学も気軽に受け入れてくれます。
一度と言わず、2〜3回は同じ学校を、子どもと一緒に見学して下さい。
コロナ禍で気軽な帰国ができない今は、オンラインでの面談を。
こちらも2〜3回は要望して下さい。
もし複数回の見学や面談を嫌がる学校ならば、その時点で候補から外して下さい。
3.教育には帰国タイミングも重要
中学生のお子さんと海外赴任しているご家庭は、帰国タイミングに注意して下さい!
受験が絡むと、ちょっと面倒になります。
3−1.日本の中学卒業資格に留意して帰国を
現地校やインター校に通う中学生のお子さんを持つご家庭は、日本の中学卒業資格に留意して帰国時期を決めて下さい。
なぜかと言えば、日本の高校を受験するには、日本の中学校を卒業している必要があります。
現地校やインター校は9月入学のことが多く、日本の中学3年生に相当すると思っていた9学年が、日本の高校生1年生だった!なんてことも。
日本の高校受験資格を得るため、文部科学省の「中学校卒業程度認定試験(中卒認定試験)」を受けなければならないのです。
しかもこの試験は年に1回、11月末にしか実施されません。
帰国タイミングを間違えると、高校入学が16歳になることもあるのです。
もちろん、1学年下げたことで子どもの将来が否定されるわけではありません。
ただ、本当は15歳で入学させたかったけど仕方なく下げた…という状況は避けたいもの。
遅くとも中学3年2学期までに帰国すれば、中学卒業資格は無事に取得できます。
また、日本人学校に通っていて公立校の受験を考えている中学生でも、帰国タイミングは要注意。
ココに注意!
実は、高校入試の内申書に記載する成績の基準は、都道府県によって違います。
例えば、長野県は中3の1学期末を基準としますが、東京都は2学期末です。
Dさん家族の例を出すと、子どもが中3の1学期に帰国して東京都の自宅に戻ったものの、子どもは新しい学校に慣れず2学期末の成績がガクッと落ちてしまいました。
内申書の点数が下がってしまったため、志望校を変更せざるを得ませんでした。
公立校を帰国予定地の教育委員会などに問い合わせて内申点の基準となる学期を確認し、最適の帰国タイミングを決めて下さい。
4.まとめ
帰任にまつわる子どもの教育、3つの注意点がありました。
海外経験を無駄にしたいための語学力の維持、帰国子女向けの学校選び、そして、受験を控えた中学生の帰国タイミングです。
帰国してから頭を抱えてしまわないように、しっかり準備しましょう。