Last Updated on 2023年10月1日 by 海外勤務のすすめ
「海外で働く」と一言で言っても、大きく分けて2通りの働き方があります。
それは、日本企業の駐在者として働くか、現地採用者として働くか、の2通りです。
両者とも海外で働くという事に変わりは無いのですが、その内容は大きく異なります。以下は、海外就労の基本で前提条件となる部分ですので、しっかり押さえておきましょう。
1.海外駐在者とは?
駐在者とは、日本企業の本社で採用され、海外の現地法人に出向という形で駐在勤務する人のことを言います。いわゆる、日本企業に勤めるサラリーマンで、日本での雇用を維持しつつ、海外で勤務する人たちを指します。彼らの多くは管理職として派遣されるため、当然ですが、ある程度の業務経験、実績が必要になります。
最近では若手に海外経験を積ませるという会社も増えており、駐在者の若年化が進む傾向にありますが、一般的には、入社後510年程度以上経った、30代半ば以降の人が多いのではないでしょうか?
駐在者の主なミッションとしては、以下のようなものがあります。
・現地法人の経営安定
・現地法人の売り上げ増加、商圏の拡大、販路確保
・技術指導、現地社員のマネージメント・教育 etc・・・
駐在者は本社と現地の仲介役であり、基本的に少数精鋭で現地をマネージメントしますので、激務となりがちです。労働時間も原則として現地法規に則りますので、日本より長時間働く傾向が強いと思います。
ただ、駐在経験を昇進の条件にしている企業も多く、幹部社員に海外での経験を求める企業も少なくありません。赴任期間は1か所に3年から5年勤務し転勤、というサイクルが多いようです。
駐在者の待遇は良い?
海外駐在といえば、「待遇が良い」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。
実はこれは、企業の考え方や規定によるもので、各社の待遇はまちまちです。
以前は、駐在者は比較的高給な会社が多かったのですが、最近では「NO LOSS NO GAIN」という考え方が企業の常識となりつつあります。
これは、海外駐在することで、損も得もさせない、という考え方で、国内勤務者とのバランス、海外赴任の一般化という最近の傾向から、企業が積極的に取り入れている方針です。
今や、国内よりも海外のほうが売り上げが大きいという企業も多く、海外に出ていくことが当たり前と考える企業は、海外赴任のプレミア感を抑える傾向にあります。
そのため、赴任者の待遇は各社様々で、例えば会社負担での一時帰国の回数の上限や、海外勤務手当の額、現地での子供の教育費補助の額は、各社が自由に設定できるので、結構企業間で待遇に開きがあります。
全般的には、海外赴任に伴う労苦の補償や海外赴任の促進という側面から、やはり今でも海外赴任することで、給与(手当)が増える、という企業が多いように感じます。
<駐在をお勧めする方>
・忙しいことが苦にならない方
・サラリーマンを続けながら、海外で働きたい方
・日本でのキャリア形成を重視される方
2.現地採用で働く
現地採用で働くということは、まさに裸一貫で日本を飛び出すということです。海外で自力で生計を立てていくという点で、本当の意味でのグローバル人材と言えるのでないでしょうか。
最近では若い方も積極的に現地採用に挑戦する人も増えており、海外で様々な人種と一緒に仕事をした経験は、間違いなく今後の人生に大きな影響を与えることになると思います。
これは例えば日本人がタイで働くのと同様に、タイ人がシンガポールで働く、中国人がインドで働くのと同じフィールドの話となりますので、上記の駐在と比較する意味は、あまりないのかもしれませんね。
一方で、現地採用の場合は年金、医療保険など、自分で考えて手当する必要があり、前述のとおり、サラリーマンとして雇用が確保されている駐在員とは大きく異なります。(勤務する企業の福利厚生にもよります。)現地採用のデメリットについても、よく理解して挑戦する必要があるでしょう。
何より海外就労にはビザの問題は避けて通れません。特に現地採用においてはビザが最も「要」となるでしょう。
各国は一般的に外国人の就労に制限を掛けていますので、外国人が海外で働く場合は、その国の就労ビザの許可が下りて、初めて働けることになります。つまり、現地企業から求められる人材であり、その資格を満たしている必要があるということが前提条件になります。
<現地採用をお勧めする方>
・とにかくすぐに海外で経験を積みたい方
・グローバルな現場で働きたい方
・誰かを頼らず、自分の人生に責任を持てる方(いい意味で)
海外駐在と現地採用の比較
|
海外駐在 |
現地採用 |
採用 |
日本(本社) |
現地企業 |
給与 |
本社給与+現地給与 |
現地給与のみ |
保険や年金 |
社会保険・年金は日本で加入したまま(企業負担) |
基本的に現地企業の規定による+自分で管理 |
待遇 |
企業により異なるが、海外赴任手当、ハードシップ手当、子女教育費補助等あり |
雇用先企業の規定による |
ポジション |
管理職・マネージャークラスでの赴任が多い |
幅広くあるが、ASEANではスタッフレベルからミドルクラスの求人が多い |
就業の難易度 |
業務経験、スキルが必要。業務命令としての派遣なので、希望しても難しいケースも。 |
就業先が見つかり、ビザが下りればすぐに海外就業できる。 |
※上記はあくまで一般的な例です。詳細は企業によって異なります。
3.駐在者と現地採用 どっちが儲かる?
最後に下世話な質問です。。が、これが一番重要なのでは無いでしょうか?
両者は一長一短あり、どちらが儲かるかは一概に言えませんが、一般的な回答は、「駐在者」となるかと思います。駐在者はあくまで日本企業に勤めるサラリーマンですので、会社は社員の処遇を確保したうえで海外に派遣されます。特にその企業の顔として赴任する形になるため、それなりの手当をもらっているケースが多いようです。
前述のとおり、「駐在することで、損も得もさせない」という考え方で社員を海外に送り出す会社が多いようですが、実質的にはハードシップ手当や、海外勤務手当などの支給により、手取りが日本での給与の1.7倍程度になったというケースも多いと思います。また、医療費や現地の年金、税金なども会社が負担することも多く、現地採用者からすると羨ましく映ることも多いようです。
ただし、家族を日本に残す場合など、デュアルライフ(2重生活)となりますので一概に駐在員はお得とは言えません。
一方現地採用者は、いわゆる日本からの派遣者ではなく、現地企業との雇用契約となります。現地での処遇、福利厚生は、採用された企業の規定によります。
儲けられるかという点では、現地採用はまさに実力第一ですので、ご自身のスキルが高ければ、かなりの高給を得ることも可能でしょう。
私の知り合いも、シンガポールの金融業界に現地採用で飛び込み、30代前半ながら2,000万円ほどの給与を得ている人もいました。
ただ、考えないといけないのは、現地採用のそれなりのポジションを狙う場合は、当然採用競合(競合する候補者)は日本人に限りませんので、彼らと同等の経験やスキルと、何より自信をお持ちの方は挑戦されるのも良いでしょう。
いかがでしたか?海外勤務を検討する場合の参考になれば幸いです。