Last Updated on 2023年10月1日 by 海外勤務のすすめ
インドに一度訪れると、「もう二度と行きたくない。」と拒絶反応を引き起こす人と「インドから帰りたくない。」とインドに引き込まれてしまう人の両方がいるといいます。
今回はインドへの出張経験の豊富なrwioiさんに、インド出張中に体験したトラブルを記事にして頂きました。
1.インド出張の心構え
私は、インドはデリーの最先端工業地域グルガオンというところに3泊4日の出張に出されましたが、どうもインドの良さを理解するのに3泊4日の旅は短すぎたようで、なかなかインドに夢中になって帰ってこなくなる人の気持ちが分かりかねるまま日本への帰途についてしまいました。
確かにインドの名所名跡でもたどってくれば考えも変わったのかもしれませんが…。
私は、普通のインド人は恐らく素朴ないい人たちなのではないかと信じています。
出張先のオフィスでは、10分に1回原色のサリーをまとったおばあちゃんがミルクティーを注ぎに来てくれました。
外資系企業に勤めているのに、英語は「カフィー」と「ティー」しか話しませんでしたが。
しかし英語が話せるインド人、つまり外国人と接点を持とうとするインド人は、愛想がないのは百歩譲って許すにしても、あの手この手で金を騙し取ろうとするのです。
こんなことが…。というまさかのトラブルを3つ紹介させていただきます。
ちなみにこのエピソードは2018年6月頃のものです。
2.両替トラブル
海外出張によく出る方ならご存じかと思いますが、大体において弱い通貨(取引量の少ない通貨)を買うときは、現地で買うに限るのです。
というのも、例えば日本国内で米ドルやユーロを買う需要は多いわけですが、メキシコペソやインドネシアルピアを買う需要は少ないので、当然日本の銀行や両替商は米ドルやユーロの在庫は大量にキープしておきますが、メキシコペソやインドネシアルピアの在庫はないか、有っても僅少です。
「薄利多売」といいますが、よく売れる商品は安く売ってももうけが出ます。
しかし売れ行きの悪い商品は高く売らないといけません。
というわけで、先進国では途上国の通貨のレートは悪いのです。
私は台湾の台北に1週間半出張してからインドに向かったのですが、当然日本でも台湾でもルピーは買いませんでした。
世界最強の通貨米ドルでもってルピーをデリーで買う気でいたんです。
純経済的にはそれが一番合理的な、はずでした。
デリー空港の税関を行き過ぎて空港の入国ロビーに出ると、雑多な民族服を着た男たちや目がチカチカするような色のサリーを着ている女たちが、地べたに腰を下ろしてボーっとしていたり、いやに鋭い眼光でこちらを見つめてきます。
なにか普通の国の入国ロビーとちょっと雰囲気が違うので、いそいそとルピーをいくらか買ってホテルに向かおうとしたのですが、3つあるうちの2つの両替所のおじさんが、眼光鋭くこちらをじっとみつめてくるのですね。
ちょっと不気味だなと思って、女性が担当していた唯一の両替商のカウンターで、ドルをルピーに換えることにしました。
100ドル札を一枚出して「ルピー」というと、なにか説明用の紙を持ち出してきて、訛りの強い英語で「200ドル出したらディスカウント」みたいなことをいってきます。
うさん臭さ満載だったので、「ノー。ジャスト、ハンドレッドダラー」と拒絶したのですが、お姉さんは目ざとく私の財布に青色の100ドル紙幣がまだ何枚も入っているのを見つけて「トゥーハンドレッド、ディスカウント」と繰り返します。
「ノー」とあくまで拒絶したところ、えらく機嫌を損ねた様子で、ぶすっとした表情でくたびれたルピー紙幣を数え始めます。
紙に数字を走り書きして、ルピー紙幣の束を突き出しだすお姉さん。
何となく直感的に怪しい気がしたので、危ないかもしれないとは思いつつもそのカウンターでルピー紙幣を数えてみると、ちょうど1000ルピー足りません!
「ヘイ、モア、ワンサウザンドダラー!」と大声を出すと、悔しそうな顔をしてマハトマ・ガンジーの描かれた1000ルピー紙幣を投げつけてきました。
建国の父がこの様子を見たらどんなに悲しむことか…。
【教訓】
・貧しい国に行くときは、割高なのを承知で日本で現地通貨を買っておく。
・インドではお釣りやお札をきちんと数えて確認する。
3.お釣りのトラブル
幸か不幸か、私達一行はインドに三泊四日しかしなかったために、基本的にはホテルと事務所の往復しかしませんでした。
グルガオンというのは、日本でいえば渋谷か六本木のような街で、インド経済の中で一番の最先端を行っている華やかな街のはずなのです。
しかし、そのグルガオンでさえ、牛がうろついているのは当然のこととして、何故か犬と猪が喧嘩をしていたり、羊がさまよっていたり、道路の中央分離帯に3本の小枝を突き立てて、ビニールを張って寝ている人がいたりといった次第で、とてもホテル以外のどこかに行こうなんていう気を起こすことはありませんでした。
ですから、ある意味インド滞在中は安全・安心だったのです。(下痢には悩まされましたが…。)
しかし、デリー空港から日本に帰国する際には、駐在員も私たちを守ってくれません。
そんな中、英語が全くしゃべれない気の毒な上司がインド人免税店店員の毒牙にかかりました…。
上司氏いわく、なにかお土産を免税店で買ったらしいのです。
それで英語で何事か数字を言われて、多分いくらいくらだろうと思った額を手渡しました。
そして、もうインドのデリーももう使わないから、ということで日本円に換金すると、本当は全然お金を使わなかったために5万円くらい戻ってくるはずだったのが、どういうわけだか3000円くらいしか返ってこなかったというのです。
そして、なんでだろうと飛行機の中で悶々としながらいくらどこで使ったか思い起こしているうちに、1時間前免税店で買ったプレゼントのレシートを眺めていると…。
その上司氏、0が一つ大きな額を免税店員に支払っていたことに気づいてしまったそうです。
私がその場にいれば、多分騙されることもなかったのですが、別々の便で帰ったこともあって、チェックインカウンターでその上司とは別行動にしてしまったのです。
と、上司氏が10倍の値段で子供へのお土産をかわされていた間、私はもっととんでもない詐欺の危機に直面していたのです。
【教訓】
・数字が通じ合わない人から外国で高い物を買うことは避ける。
・大体現地の通貨が円にするといくらか頭に入れておく。
4.通関時のトラブル
実は、このインド出張ですが急遽決まったもので、急いで事務の女の子が飛行機の便を探してくれたのですが、台北からデリーに出る航路はなく、広州乗継便しかなかったのです。
そして、広州乗継便にもエコノミークラスの空きはなく、なんと私広州=デリー間はビジネスクラスでのご出張となりました。
(きっと次のビジネスクラス出張はあと何十年後かでしょう。)
しかし、どうもこれが災いしたようです。
身長165センチメートルで眼鏡をかけたいかにも外国慣れしていない日本人に見える私は、どうもビジネスクラスに乗っていて金だけはあるらしいと、グラウンドスタッフは睨んだようです。
グラウンドスタッフに荷物を預けてチェックインしたのち、しばらくすると中国南方航空のインド人スタッフが、私のことをニヤニヤみながら「おい、こっちへ来い」と手招きします。
「なんだ?こいつら」
と思いながらカウンターに戻ると、グラウンドスタッフが
「税関のオフィサー殿がお前の荷物について尋問をしたいと仰せだ。」
といいます。
私のスーツケースには、私の下着と背広と靴下と本が何冊かしか入っていないので、税関のオフィサー殿になにか申し開きをする必要はないのです。
要は関税を払うようなものは一つも持っていないわけですから。
しかし、外国で「オフィサー殿がお待ちだ。」といわれれば、これを無視するわけにもいきません。
仕方なく、彼らの指示通りに、出国審査を済ませた後、中国南方航空のインド人スタッフに導かれるままに、何か空港の奥の方の事務所の前の廊下のようなところに連れていかれてしまいました。
そこには、ぶぜんとした諦めきったような顔で、ただただ辛抱強くオフィサー殿の尋問を待つインド人たちであふれかえっていました。
「どれくらい待つんだ?」とグラウンドスタッフに聞いたら、「そんなの知るか」とのこと。
実際優に1時間は待ったかと思います。
私の名前が呼ばれてやっとオフィスに入室が許されると、オフィサー殿が改めたいといっていた私のスーツケースは部屋の中にはありません。
そして、くたびれたポロシャツを着たオフィサー殿の第一声は以下の通りでした。
「で、なんだね、ルピーで払うかね、ドルで払うかね?」
なんでお前に賄賂を払わなくちゃいけないのかと私は急に腹が立ったので、こうまくしたてました。
「オフィサー殿、そもそも私は今何でここに連れてこられているのかわからない。だからインド共和国の何法の何条何項に基づいて私がここに連れてこられているのか説明してもらいたい。
大体私は航空会社の人間から私の荷物についてオフィサー殿が確認したいといっていると聞いたが、私の荷物自体はここにない。それであなた、どうやってオフィサー殿は私の荷物を確認するのか、説明していただきたい。」
およそ1,2分ブロークンイングリッシュでひとしきりまくしたてると、
「ユー、ゲットアウト。フィニッシュ」
とのたまい、私の税関職員からの尋問は3分と掛からず終わりました。
私を連れてきたグラウンドスタッフに「私は一銭もこの場でとられなかったし、何も聞かれなかった。
あんたら俺の1時間をどう考えているのか?」と聞いたら、
「すべてはオフィサー殿のご決定だ。」としゃあしゃあとのたまわりました。
【教訓】
・中国では不正・腐敗はコソコソ行われるが、インドでは大っぴらに認められている。
・とりあえず英語で理屈にかなったことをいえば、インドの役人は黙らせられそうだ。
以上、私の体験談でした。
皆様の渡航時のご参考になれば幸いです。