Last Updated on 2023年10月1日 by 海外勤務のすすめ
中東市場に注目するビジネスマンの皆さまにとって、昨今とても気になる国の1つが、イラン・イスラーム共和国ではないでしょうか。8,000万人という人口は巨大市場と呼べますし、天然ガスの生産国のため、供給地としても大変魅力的であることは周知の事実です。
そんなイランにご出張される皆さまに、いくつかのポイントを紹介したいと思います。
1.服装への配慮 〜男性〜
男性は、日本でビジネスをされる際と同じで大丈夫です。業種によって多少の差はあるかと思いますが、スーツやワイシャツ、ジャケット、チノパンなど、おなじみのアイテムで問題ありません。
ただし、ひとつ覚えていただきたいのが「ネクタイは外した方が良い場合がある」ということです。イランにおいてネクタイは、なにかと対立するアメリカ文化の象徴として見なされます。イランでは、大統領や閣僚などの有力者もノータイで公の場に出ることが多いですが、それにはこのような背景があります。
昨今、グローバルなマナーとしてネクタイを解釈する人が増えたりした結果、ネクタイ姿を以前より見かける傾向にありますが、出張者の皆さまの場合は、ネクタイを身につけるかどうかは相手に合わせる、というスタンスが良いでしょう。
2.服装への配慮 〜女性〜
女性は、ボディラインの出ない長袖のコート(ヒップより丈の長い上着)と、フルレングスのパンツ(長ズボン)、そして髪を覆うスカーフやストールが必須です。
この服装は、わざわざ慌てて買い集めなくとも、日本で販売されている服で十分に対応可能です。
例えば、春と秋なら、トレンチコートにパンツ。夏なら、たぽっとしたワンピースにスキニーパンツ。そこにスカーフやストールをプラスすれば完成です。色の規定はありませんが、ビジネスシーンであれば日本と同様に、黒や紺、白など、コンサバな色でコーディネートするのが適切でしょう。
プライベートな場所では、スカーフをとることが許されます。ホテルの自室内や、家の屋内などです。会社にいる間やビジネスの間は、プライベートではありませんので、外すべきではありません。
また、ホテル内で朝食を食べに行く際や、ちょっとフロントまで行く際など、うっかりスカーフを身につけずに部屋から出てしまわないように気をつけてください。
3.文化・宗教への配慮
イランは中東に位置するため「だいたいアラブと一緒では?」と思ってしまう日本人が多いかもしれません。しかし、実はUAEやサウジ、エジプトなどはアラビア語を話すアラブ人の国であり、イランはペルシャ語を話すペルシャ人の国です。
言語も文化も歴史も、ルーツがまったく異なります。そのため、同一視されることをとても嫌がります。
良かれと思って、中東経済を褒めようと「ドバイの発展には目を見張りました」などと話すことは、イランの人にとってはライバルを褒められたようなもの。激怒して反論されても文句は言えません。
アラブとペルシャは違うということ、そして、それぞれ自分の文化を大事にしていることを肝に命じておきましょう。
4.ビザ取得の注意点
日本人は、イランの空港への到着時にアライバル・ビザを取得することができます。
しかし、これには要注意。
イランの入国審査官はランダムに入国をはじきます。
なんらかの不備や不審点、挙動の問題があってではなく、「見せしめ」を目的として適当に人を選んではじきます。
もしはじかれても、旅行であれば笑い話になりますが、出張ではそうはいきませんね。事前にビザを取得してから渡航されるよう、強く、強くおすすめします。はじかれた人を、私も何人も見ております。
尚、どうしても事前にビザを取得する時間がなく、アライバル・ビザ狙いで渡航した結果、入国審査で運悪くはじかれてしまった!といった場合はどうなるか。
その場合は、次の空いているフライトで出発地へ送り返されます。イランに出張される日本人は、ドバイ経由の渡航が多いかと思いますが、その場合はドバイまで送り返されます。
ドバイはノービザで入国できますので、ドバイまで何とかたどり着いて、落ち着いて次の手を打ちましょう。
5.イラン人との関わり方
「イラン人はどのような人ですか?」という質問に一言で答えると「誇り高くて親切で、口達者な人たち」です。一見とても頼もしそうですが、時にはこの性格が裏目に出てしまうことも。
たとえば「プライドが高すぎて、できない仕事も「できる」とつい言って引き受けてしまう」といったこと。「親切すぎて、在庫がない商品も「御社の分ならいつでもあるよ」と言ってしまい、実際には納品できない」といったこと。
対策としては「言葉よりも行動・実物を信じる」ことや、時間的・能力的バッファを多めに見込んで仕事を進めることです。
もちろん彼らの「誇り高さ・親切さ・口達者さ」が良い方向に働いて、無理難題にも柔軟に向き合い、どうにかこうにか解決の糸口をひねり出して来ることも多々。
ぜひビジネスという切り口から、イランの魅力を発見していただきたいな、と思います。
皆様のイラン出張のご参考になれば幸いです。