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海外人事労務

海外出張を許可する?しない?担当者が知っておくべき「外務省危険情報」の最低限の知識まとめ

Last Updated on 2023年10月1日 by 海外勤務のすすめ

海外での事件事故の増加に伴い、海外出張者の安全対策を検討する企業がかなり増えているように感じます。特に海外出張の可否判断は、人事部や所属部門にとって難しいところです。

一般的には、外務省の「海外危険情報レベル」に準拠した形で海外出張を許可している企業が多い状況ですが、今日は外務省の基準と出張可否判断の相場観をお伝えしたいと思います。

1.外務省海外危険情報レベルとは?

外務省は、海外での邦人保護の観点から、各地域の危険度を色分けで示しており、これらは、下記の海外安全ホームページで確認できます。渡航する先がどのようなレベルなのか、必ず確認するようにしましょう。

外務省海外安全HP

危険情報レベルは、以下の4つに分類されます。

「レベル1:十分注意してください。」

その国・地域への渡航,滞在に当たって危険を避けていただくため特別な注意が必要です。

「レベル2:不要不急の渡航は止めてください。」

その国・地域への不要不急の渡航は止めてください。渡航する場合には特別な注意を払うとともに,十分な安全対策をとってください。

「レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」

その国・地域への渡航は,どのような目的であれ止めてください。(場合によっては,現地に滞在している日本人の方々に対して退避の可能性や準備を促すメッセージを含むことがあります。)

「レベル4:退避してください。
渡航は止めてください。(退避勧告)」

その国・地域に滞在している方は滞在地から,安全な国・地域へ退避してください。この状況では,当然のことながら,どのような目的であれ新たな渡航は止めてください。

レベル0(白地の地域)を合わせると5段階のレベルがあるということになります。

危険情報レベルは、その地域の邦人に対する恒常的なリスクを注意喚起するため、中長期的な観点で発出されます。単発的な事案で頻繁にレベルが変わる、という性質のものではなく、あくまで中長期的な当地の状況を勘案して決定されます。

例えば、下図のインドの場合では、

・全土でレベル1が発出されている。

・中東部、アッサム州周辺はレベル2の地域が多い。

・パキスタンとの国境付近は退避勧告地帯もあり、渡航不可

という状況が見て取れます。

なお、外務省情報に加えて、米国や豪州、英国など各国の危険情報も参考になる場合があります。詳しくは下記の記事をご覧ください。

2.レベル毎の対応について

それでは、レベル毎の企業の一般的な対応について解説していきます。

まずレベル1の地域は、「注意して渡航可」として出張許可をしている企業が多いと思われます。ただし、レベル0が通常となりますので、レベル1が発出されている地域でも本人に注意喚起の上、場合によっては安全対策が必要となります。

レベル1でも、以下の点を勘案してください。

  • レベル1の発出時期、内容
  • スポット情報の有無(後述)
  • 直近のニュース、報道
  • 直近に出張した者の声、他社からの情報

特に、直近にレベル変更があったり、スポット情報が出ているような地域はより慎重に判断すべきといえるでしょう。

続いてレベル2です。

レベル2以上の地域は、原則は渡航しないほうが良い地域と理解頂くのが良いと思います。企業の出張でも、レベル2以上の地域は、「原則渡航はしないが、申請により可否判断」、という企業が多いと思います。

特に企業が出張判断に迷うのは、レベル2の地域ではないでしょうか?

レベル2の地域はリスクも高いのですが、開発地域も多く、ビジネスチャンスも多い地域のため、商売上は出張させたい、という企業も多いと思います。現地に渡航する場合は、現地の状況と訪問先、訪問ルートを整理して、安全対策を徹底して渡航する必要があります。

心配な地域への安全対策の例としては、

  • 現地関係会社や取引先、現地官公署、報道機関などからの情報収集
  • 渡航者と常に連絡できる通信ルート、手段の確認
  • 危険な地区を避けた移動ルートへの修正
  • セキュリティレベルの高いホテルの選定
  • 訪問先や、移動手段の見直し
  • 可能な限り、ホテルに来てもらって打ち合わせする。
  • 日が暮れないうちにホテルへ戻るよう指示する
  • 行動制限(ホテルからの外出禁止、など)
  • 所属部門へのレポーティング(行動報告)の頻度を上げる。

などが挙げられます。

上記はあくまで例です。対策は渡航地域や直近の状況により濃淡がありますので、くれぐれも状況に合わせて検討するようにしてください。

 

レベル3の地域は、企業の場合は原則駐在者を置かない、駐在者の退避も検討する、という非常に重い事態と考えてください。レベル3の地域ともなると、商社やプラント、インフラ関係企業など限られた企業が一部駐在を置いている、という状況かと思います。

レベル3の地域への出張は、当然ですが、レベル2の安全対策より安全サイドに立った対策が必要です。そもそも渡航を避けるのが大前提ですが、レベル3の次はレベル4の「退避勧告」となりますので、その場合を想定した準備をして渡航する必要があります。

 

レベル4はいわゆる「退避勧告」地域です。現在のシリアなど戦闘状態の地域が中心になりますので、渡航は禁止とご理解頂くのが良いと思います。

3.スポット情報について

恒常的なリスクによる危険情報レベルとは別に、例えば直近の事件事態に関する瞬間的な注意喚起は、外務省は速報的に「スポット情報」を発出します。スポット情報も危険情報レベルと同様に重要で、危険情報レベルと組み合わせて考慮する必要があります。

スポット情報での状態が常態化する場合や、警告頻度が多くなってくると、危険情報を引き上げる、という場合もありますので注視が必要です。

<どんな場合にスポット情報が発出されるか?>

  • A国における過激デモの発生、B国における全国規模のストライキ
  • E国(F市)における連続爆弾事件、G国(H地方)での大雨被害
  • T国内のテロ攻撃に関する、現地当局の警告レベルの引き上げ
  • U国における外国人をねらった強盗事件の多発  など

スポット情報は元々の危険度や、発出されている理由で異なりますので、画一的なレベル分けはできないのですが、例えば渡航先が、レベル1「十分注意してください」の地域で、更にスポット情報が発出されている場合は、更にレベルを加重して、組み合わせて状況を勘案することも必要かもしれません。

このような場合、

  • 単身出張か?
  • 自社拠点はあるか?
  • 拠点のスタッフ、取引先のサポートを受けられるか?
  • 渡航者は何度も渡航している先か?

などのリスク回避能力の点も考慮して判断する必要があるでしょう。

4.渡航者本人への注意喚起

さらに言えば、渡航する本人にも、現地の情報を知っていただく必要があります。特に日本政府が邦人保護のために発出しているアラートやスポット状況は、必ず出張者本人が受け取れる体制を作るようにしましょう。

個人的には外務省の「たびレジ」がお勧めです。最近では、様々な会社が海外アラートサービスを提供していますが、以下の点からたびレジは非常に有用だと思います。

<たびレジをお勧めする理由>

  • 日本政府からの公的なアナウンスであること
  • 現地大使館が邦人保護のために必要と判断して発出している情報であること
  • 万が一の際に「短期在留届」にもなりうること(現地在外公館も滞在を把握できる)
  • 様々な地域の情報を日ごろからウォッチできる。

たびレジは、外務省が力を入れて取り組んでおり、内容なども工夫されていると感じます。頻度なども比較的多く配信されますので、情報収集には最適なツールかと思います。以下のサイトから登録できますので、まずは登録されることをお勧めします。

たびレジ

いかがでしたか?

安全な出張のため、外務省情報を是非利用されることをお勧めします。

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