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海外駐在者への安全配慮義務、どこまでやれば十分か?考え方と必要な対策まとめ

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イギリスマンチェスターでのISによるテロ攻撃や北朝鮮のミサイル発射など、昨今の海外ニュースは特に物騒なものが多くなってきています。

現に日系企業の進出先であるジャカルタやインド、欧州などでもテロの頻度が上がっており、企業の人事担当者は、赴任者に対する「安全対策」についてかなり関心が高まっていると思われます。

社命で社員を海外に送り出す以上、企業にとっても安全配慮義務が付いて回りますが、どこまで対応すれば十分な配慮といえるのか、悩まれている担当者も多いのではないでしょうか?

今日は海外赴任者に対する安全配慮義務について考えてみたいと思います。

1.安全配慮義務の根拠

企業が社員に対して負う「安全配慮義務」は労働契約法5条で明確に規定されており、この条文が安全配慮義務の根拠となります。

労働契約法 5条「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」 

海外出向者の場合、現地法人と本社の両方に雇用契約が発生します。そのため、海外出向中の社員に対しても、本社でも引き続き安全配慮義務を負うことになります。

海外赴任者、海外出張者に対しても、安全を確保しつつ業務ができるよう、何かしらの配慮が必要と言えそうです。

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2.判例から対策を考える

それでは、海外派遣者の安全対策として、どこから手を付ければよいのでしょうか?

まず、ポイントとなるのは、過去の「判例」です。

どのような事案に会社が敗訴しているのか、またどのようなトラブルが多いのかを確認するのは対策の基本となります。

結論から申し上げると、過去の判例からは長時間労働による過労死や、メンタルヘルスに関するトラブルが多いのが実情です。例:海外赴任先における過労自殺認定事案(天満労基署長事件)

特に少人数で現地拠点を運営している企業が多いと思いますが、どうしても過重労働になりがちです。優先順位としては、各種海外安全サービスを調達されるよりも、海外赴任者の労務管理や、環境整備の優先度は高いかもしれません。

また、海外での労苦を海外勤務手当やハードシップ手当で補償している旨明記するなど、規定を整備する方法も有効かもしれません。

海外派遣者の労務管理は安全配慮を考えるうえで、最もベーシックな部分になりますので、まずは下記を参考に、必要な対策を検討されることをお勧めします。

安全配慮義務上、お勧めしたい対策

  • 赴任者、出張者の労働時間の本社管理
  • 一時帰国、特別休暇等の取得促進
  • 人事による拠点巡回、ヒヤリング
  • 赴任者へのストレスチェックの実施 
  • 海外事案にも相談・対応できる産業医との連携 など

3.検討すべき課題

労務管理を徹底したうえで、更にできることはあるのでしょうか?

海外の事案で、安全配慮義務違反を争った判例はまだ少ないようですが、今後増える可能性はあります。また、争いになって初めて判例として表れるため、表に出てこない社員と会社のトラブルはあるかもしれません。海外派遣者の増加に伴い、今後、安全配慮上、提起される可能性のある例を挙げてみます。

例1.)交通事故(本人の妻から)

夫が中国内陸部に出張中、タクシーによる交通事故に巻き込まれて重症を負った。本人は現地語が話せず、緊急時の対処方法なども理解していなかった。また、地元の病院に駆け込んだものの、その後もスムーズな治療を受けられなかった。

会社は、日本と医療環境が異なることを承知で派遣している以上、何らかの対策を講ずるべきであるが、サポート体制を用意していなかった。安全配慮義務に不備があるのではないか?夫は障害を負う可能性もあり、経過によっては会社に対して損害賠償も考えたい。

<課題点>

医療アシスタンス会社(※)との契約があれば、24時間日本語コールセンターによる病院手配、日本人医師のいる環境の整った病院への転院手配、医師による症状のモニタリング、症状が安定してからの都市部への医療搬送、などが対応できたかもしれない。

また、本社体制がしっかりしていれば、拠点(もしくは本社)からのスタッフ駆け付け、日本の家族への連絡、保険会社への連絡、なども迅速に出来たかもしれない。

※医療アシスタンスサービスとは、企業と医療アシスタンス会社が個別に契約をし、海外の病気やケガの際の病院手配、通訳手配、緊急医療搬送などを保険の適用に関わらず対応するサービスです。

 

例2.)テロ(被災労働者本人から)

インドネシアに赴任中、スーパーマーケット近くでの爆弾テロに巻き込まれて、大ケガを負った。

海外でテロ組織の活動が顕在化している中で、会社から十分な赴任前の情報提供が無かった、また、赴任前の教育も受けていない。聞けば、本社には海外での緊急事態発生時の危機管理マニュアルも無いようだ。本社や拠点の安全体制として安全配慮に不備があるのではないか?

<課題点>

赴任先のリスク情報を本人に提示した上で、いかに自分の身を守るか、リスクを低減させるか、教育する必要がある。具体的には、本社として赴任先のリスク情報を把握し、必要なものは本人に提示する。また、赴任前に、生活面や安全という切り口で説明会を実施する。

また、テロや犯罪頻発国への派遣の場合、警護や安全防御装置の付いた自動車や住宅等の提供などについても、対策を検討する必要がある。

なお、交通事故、暴動、テロ、緊急医療など事態別の対応マニュアルの整備も要検討。

4.安全配慮の考え方

現在海外安全対策に関する様々なサービスがあり、安全対策はどこまでやればいいか?と疑問に感じる担当者も増えております。

結論から申せば、

ポイント

安全配慮義務対策とは、会社と海外赴任者(または家族)との間で、万が一争いになった際に、「会社側が抗弁できる材料を揃える」ということです。

例えば、被災した赴任者や出張者の家族から、

  • 本社の海外赴任者に対する労務管理体制
  • 取引先や同業他社が導入している海外安全サービスの比較
  • 赴任先国との医療水準の差(搬送体制、緊急時駆け付け体制)
  • 本社や現地拠点の危機管理体制、マニュアル類の整備状況
  • その他、保険の付保状況、補償規定

などについて、会社の不備を指摘されたときに、抗弁できる材料はありますでしょうか?

この材料を増やす、埋めるという作業が、安全配慮を果たすということに繋がります。

また、これらは赴任者本人の安全性向上にもなりますので、会社を守るのと同時に、本人を守ることにもつながります

同時に、海外安全対策は「本人の理解」が非常に重要です。

赴任先にどんなリスクがあるのか、トラブルに遭遇した場合、どう対処すればよいのか、会社として「教育」する機会を設けることは非常に重要です。

自分の身は自分で守るのが大前提になりますので、安全講習などを定例的に実施することも、企業の安全配慮を果たすことにつながると思われます。

なお、対策は、企業の拠点地、業種、訪問形態、渡航期間、トップの考え方などによって異なりますので、まずは赴任先のリスク確認、自社及び他社の過去のトラブル実例等を洗い出して、何から対応すべきか、検討する必要があるでしょう。

 

5.海外でのサポートサービスについて

現在、様々な海外安全に関するサービスが増えています。

医療アシスタンスサービスや警護手配、国外退避サービスなどは、あればよりスムーズに治療や救援ができた、というケースもあるでしょうが、導入していない為、即、企業の安全配慮が足りないと言い切れない部分があります。

特に医療アシスタンスサービスは、海外旅行傷害保険とオーバーラップする部分も多く(病院紹介、予約、搬送など)、企業が個別に医療アシスタンスを導入しても、さほど利用しないというケースも散見されます。

また、どこまで海外での安全管理サービスを導入するかというのは、企業の安全意識や福利厚生の方針にもよります。

特に海外進出を推進する企業にとっては、待遇面や安全面での体制の拡充は、自社の海外勤務希望者増加や、他社との競争力強化につながり、安全配慮という側面ではなく、経営方針から拡充に迫られるケースも多いようです。同時に海外勤務者が過度に利益を享受しないよう、国内勤務者とのバランスも重要になるでしょう。

いかがでしたでしょうか?

まずは労務管理からスタートして、必要な対策を拡充されることをお勧めします。

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